日本暗号資産市場が発行するICHIBA(ICB)は、一般人が買って大丈夫なの?
2020年8月にPRTIMESでもプレスリリースされた、日本暗号資産市場が発行するICHIBA(ICB)をご存じでしょうか?
ICB自体は怪しげなものではないのですが、ICBを買おうと思うと詰まるところがあったので、「たぶんだいたいの人は買えると思われる」という結論を共有しようと思います。
(購入と流動性供給の手順はこちらの記事へ)
ただし、あくまで調べて私が出した結論の共有ですので、ここの情報を使用したことによる不利益等にに対する責任は一切負いませんので、あらかじめご了承ください。
この内容はあくまで参考意見として、ICB購入等は自己責任でお願いします。
また、とくに取引や投資を勧めるためのものではないことも明言しておきますw
まずはそもそもICBって何なの?という方のために、このへんの整理をしておきます。
日本暗号資産市場とは
ICBの前に、発行会社についても触れておきます。
日本暗号資産市場株式会社は、代表の岡部氏が率いる、暗号資産と実際の「モノ」をつないで、暗号資産に利用価値を生もうとしている会社です。
ICB以外にも『オクリマ』というなかなかに面白いサービスも展開されています。
ICHIBA(ICB)とは
ICBは、EthereumのERC20という規格に基づいて発行される「前払式支払手段」のトークンです。
法律は専門外なので調べつつ理解していっているところですが、一般社団法人日本資金決済業協会のHPによると、前払式支払手段とは以下4要件すべてを備えたものだそうです。
(1)金額又は物品・サービスの数量(個数、本数、度数等)が、証票、電子機器その他の物(証票等)に記載され、又は電磁的な方法で記録されていること。
(2)証票等に記載され、又は電磁的な方法で記録されている金額又は物品・サービスの数量に応ずる対価が支払われていること。
(3)金額又は物品・サービスの数量が記載され、又は電磁的な方法で記録されている証票等や、これらの財産的価値と結びついた番号、記号その他の符号が発行されること。
(4)物品を購入するとき、サービスの提供を受けるとき等に、証票等や番号、記号その他の符号が、提示、交付、通知その他の方法により使用できるものであること。
要するにSuicaなんかを想像すればだいたい良さそうです。
このへんが巧妙だと思いますが、どうやら前払式支払手段は暗号資産には該当しないようです。
金融庁が出している「暗号資産事務ガイドライン」、I-1-1②の注意書きにこんな記載があります。
(注)前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「プリペイドカード」や、ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)における「ポイント」は、これらの発行者と店舗等との関係では上記①又は②を満たさず、暗号資産には該当しない。
というわけで、ICBに関しては「暗号資産」ではなく「前払式支払手段」に関するルールが適用されるわけですね。
一方で、ICBはERC20というEthereumの規格に準拠しているので、このへんはEthereum上にある他のトークンと同様に扱うことができる便利さがあります。
(参考)
・有名なトークンやメリットを紹介!Ethereumの「ERC20」とは(TECHACADEMY)
・前払式支払手段とは(一般社団法人日本資金決済業協会)
・前払式支払手段ご利用のみなさまへ(社団法人日本資金決済業協会)
商行為とは?
さて、遊んでみようと思い公式HPへICBを買いに行ったところでちょっと詰まります。
必須の回答項目に、以下の記載があります。
事業者、もしくは商行為目的での購入ですか?
事業者じゃないので買っちゃダメなのかと思いつつ、なんかこれ見よがしに「商行為目的」という選択肢が提示されています。
結論としては「利益目的とか、取引所で取引する目的なら買ってOK」と思われますが、ここから順を追って見ていきましょう。
商行為の定義
商法の501条に定義がありました。
第五百一条 次に掲げる行為は、商行為とする。
一 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
二 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為
三 取引所においてする取引
四 手形その他の商業証券に関する行為
こんな感じです。
基本的には、ICBを買う人にとっては以下の目的であれば商行為と言えそうです。
・利益目的の売り買い
・取引所での取引
(参考)
・商法:商人と商行為とは・・(小林弘明税理士事務所)
・商人と商行為について(行政書士田中明事務所)
・「商法の概要」と「商人・商行為」(4か月で行政書士の合格を目指す行政書士通信講座)
「取引所においてする取引」とは
念のため、取引と取引所についても調べておきましょう。
関係ありそうな「取引」は金融商品取引法と考えると(他にもあったらすみません)、以下によって暗号資産の取引は金融商品取引法で扱うところの「取引」のようです。
第二条の二 暗号資産は、前条第二項第五号の金銭、同条第八項第一号の売買に係る金銭その他政令で定める規定の金銭又は当該規定の取引に係る金銭とみなして、この法律(これに基づく命令を含む。)の規定を適用する。
特に暗号資産については、同じく金融商品取引法の以下に「暗号資産関連デリバティブ取引等」というのが定義されています。
第百八十五条の二十二 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 暗号資産の売買(デリバティブ取引に該当するものを除く。以下この章及び第百九十七条第二項第二号において同じ。)その他の取引又はデリバティブ取引等(暗号資産又は金融指標(暗号資産の価格及び利率等並びにこれらに基づいて算出した数値に限る。次条第一項及び第百八十五条の二十四第一項において「暗号資産関連金融指標」という。)に係るものに限る。以下この条、次条及び同号において「暗号資産関連デリバティブ取引等」という。)について、不正の手段、計画又は技巧をすること。
で、この「暗号資産関連デリバティブ取引等」に基づいて暗号資産交換業者に関する内閣府令の第一章第2条で「暗号資産交換業者等」というのが以下の通り定義されています。
一 暗号資産交換業者等 暗号資産交換業者、外国暗号資産交換業者又は金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第百八十五条の二十二第一項第一号に規定する暗号資産関連デリバティブ取引等を業として行う者をいう。
ちなみに上記の次に書いてある条文をたどると、「暗号資産交換業に係る取引」というのも資金決済に関する法律の第一章第2条に以下の通り定義されています。
7 この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。
とすると、「暗号資産交換業者に登録された業者のもとで暗号資産の売買や交換をする」行為は、商法で言うところの「商行為」になりそうかなという感じです。
そして暗号資産交換業者は、金融庁が出している「暗号資産交換業者登録一覧」を見れば把握できるという寸法です。
(参考)
・暗号資産交換業者登録一覧(金融庁)
まとめ
日本暗号資産市場のICHIBA(ICB)を購入するときに「事業者、もしくは商行為目的での購入ですか? 」というチェック項目があって、自分がICBを購入して良いのか分からなかったので調べてみました。
結論は、「ICBを買おうと思うだいたいの人は買って良いと思われる」です。
もう少し詳しく言えば、特に以下のうち少なくとも1つを「目的」としてICBを購入するのであれば問題なさそうです。
①ICB含む何らかの売買で利益を得る。
②暗号資産交換業者に登録された業者のもとで暗号資産の売買や交換をする。
「目的」というのもちょっと幅がありそうですが、これは利益を得るステップのどこかでICBを介入させるって感じでしょうかw
とりあえず自分は買って良さそうだということが分かったので、ためしに買ってみようかと思います。
冒頭にも書きましたが、あくまでこれは私が個人的に調べた上での意見で、この内容を利用したことによる不利益等の責任は一切負えませんのであしからずw
ちょっとでも参考になりましたら幸いです(=゚ω゚)ノ
ではでは、今回はこのへんで。
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2020/11/1追記
日本暗号資産市場株式会社の岡部氏から、商法502-503条の相対的商行為でもOKという補足をいただきました。
というわけで、追記として商法の該当部分を引用しておきます。
第五百二条 次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。
一 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
二 他人のためにする製造又は加工に関する行為
三 電気又はガスの供給に関する行為
四 運送に関する行為
五 作業又は労務の請負
六 出版、印刷又は撮影に関する行為
七 客の来集を目的とする場屋における取引
八 両替その他の銀行取引
九 保険
十 寄託の引受け
十一 仲立ち又は取次ぎに関する行為
十二 商行為の代理の引受け
十三 信託の引受け
第五百三条 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。
2 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。